「地文」素材である鉄の美しさ

日本刀の表面には文様が見られますが、鍛錬・焼き入れをすれば自然に日本刀の地肌に出るそうです。そのことを意識して、自然ではなく地肌に文様を出させ、板目・柾目・杢目などと名付けていることが日本刀の面白さの一つです。

室町時代の末期には、板目・柾目・杢目のすべてが作られていたと考えられます。それまでの日本刀について書かれている書物には、あまり地文に関しての文がありませんでした。また、あったとしても、渦巻きや砂流しという表現だったとされています。その渦巻きや砂流しと表現されていたものが、板目・柾目・杢目のように整理されていき、鉄の色合いによる表現も少なくなっていきます。こうなった理由としては、日本刀を持つ武士の変化に影響されたと考えられます。武士たちは戦に勝ち、位を高めていくときに、自分の家の格式を尊重しようと、家宝として名刀を持つ必要があったのです。そのとき名刀を判断するために、鑑定士の目利きが必要とされました。その鑑定をするときに、日本刀の一部を表現する言葉が増えたと考えられます。

また、板目・柾目・杢目以外にも松川肌や綾杉肌などがあります。それはどちらも植物の木材の模様になぞって付けられた名前です。これは鑑定士でなくても、植物と関連付けて地文をわかるようにと考えられてつけられたものです。そして、日本刀を研ぐ研師も地文を意識して、日本刀を研いでいたと思います。

そのように、日本刀の地肌に自然に現れた文様に名前を付け、その面白さと美しさに魅了された意識はとても素晴らしいことです。また、鉄という素材の美しさを見出そうと、技術や表現方法を発展させた日本人の特性に心が動かされます。

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